リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第7回)
〜マーケティングって具体的に何から始めたらいいの?~
こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。
「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、
リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。
このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。
さて、今回のテーマは「マーケティングって具体的に何から始めたらいいの?」です。
リーダー初心者の段階の中小企業の社長さんや、店長さん、あるいは、個人事業主の方やフリーランスの方には、共通のお悩みがあると思います。
「マーケティングが大事なのは分かったけれど、具体的に何から始めればいいのかわからない。」という悩みです。
そこで、今回の記事では、具体的なマーケティング活動の始め方をご説明して参ります。
それでは行ってみましょう!
目次
1.マーケティング・ミックス4Pを効果的に展開するための事前準備とは?
事前の情報収集もなく、闇雲に戦略を立ててもうまくいきません。
マーケティングとは、顧客から支持され続ける仕組み作りのことです。
マーケティング戦略を効果的に行うためには、顧客は何を求めているのかというニーズをしっかり情報収集し、分析・評価する必要があります。
そこで、マーケティング・ミックス4Pを効果的に展開するためには、その事前準備として、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)を検討していきます。
これらの頭文字をとって、STPと呼ばれています。
以前の記事「マーケティング戦略入門(第1回)〜そもそも「戦略的思考」って何?~」では、戦略的思考の大切さについてお話ししました。
その中でも、約2500年前に書かれた兵法書・戦略書のベストセラーである「孫子」の兵法を引用し、戦略を立てる際の考え方についてご説明しました。↓
リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第1回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)
孫子は、戦争とは国家の存亡の分かれ道といえる重大事であるから、戦う前に様々な観点から検討して、勝てるかどうかを熟慮しなければならないと述べています。
すなわち、勝つための戦略が事前に描けないのに闇雲に戦ってはいけないと説いています。
現状をしっかり分析し、まずは負けない態勢を整え、勝てる相手に対して、勝つべきタイミングを見出して戦うことが大切なのです。
したがって、勝つためのマーケティング戦略を考えるために、事前準備としてのSTPをしっかりと行いましょう。
2.STPの具体的な検討内容とは?
それでは、STPの具体的な内容であるセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)のそれぞれを見ていきましょう。
これによって、それぞれのやるべき検討内容が具体的にご理解頂けると思います。
2-1.セグメンテーション(Segmentation)とは?
今日のビジネスでは、一口に市場と言いましても、その中にいる顧客のニーズは多様化しています。
そのため、それぞれの顧客ニーズにかなった製品やサービスを作り出して提供しなければ、売れません。
したがって、ある市場全体の顧客をターゲットとして経営資源を投入することはまれです。
また、顧客ニーズを的確に捉えて、ターゲット顧客を絞り、そこに経営資源を集中投入すれば、中小企業であっても大企業に勝つことができる場合があります。
そこで、似たような顧客ニーズを持つグループごとに市場を分類することからマーケティング活動を始めます。
この同じような顧客ニーズごとに市場を分類することを「セグメンテーション」といいます。
そして、細かく分類された市場のそれぞれを「セグメント」と呼んでいます。
2-2.ターゲティング(Targeting)とは?
次に、それぞれのセグメントの特徴を比較検討した上で、自社が有利に戦えそうな特定のセグメントを選び出します。
これを「ターゲティング」と呼んでいます。
勝てないセグメントで戦っても、経営資源を浪費するだけで効果が出ないからです。
「孫子」の兵法も、勝てない戦場で戦うことを厳しく戒めています。
前述したように、まずは負けない態勢を整え、勝てる相手に対して、勝つべきタイミングを見出して戦う作戦を立てるのが戦略の基本なのです。
したがって、限りある経営資源を効果的に使うためには、ターゲット市場を絞り込むことが大切です。
2-3.ポジショニング(Positioning)とは?
さらに、そのターゲットと定めたセグメントの顧客に対して、競合と差別化できるように、明確なブランド・ポジションを確立できるように作戦を立てます。
ここで「ブランド・ポジション」とは、顧客から見た時の市場の中での立ち位置のことです。
つまり、ターゲット顧客から見て、自分の製品をどのように見られたいのか、競合とはどのように違って見られたいのかという、市場の中での望ましい立ち位置を検討していきます。
これを「ポジショニング」と呼んでいます。
市場の中での自分の製品の立ち位置が不明確ですと、数ある競合の製品の中に埋もれてしまい、顧客から選んでもらえません。
したがって、ターゲット市場の中でのブランド・ポジションをどのように作り上げていくのかという観点から、自分の製品のポジショニングをしっかりと検討していきます。
3.STP実施の具体例とは?~ロッテとサントリーのブランド開発~
具体例として、ロッテが展開しているガムの複数のブランド(商品群)を見てみましょう。
・「クールミント」
→清涼な爽快感が欲しい顧客
・「キシリトール」
→虫歯が気になる健康意識が高い顧客
・「ブラック・ブラック」
→運転中や仕事中の眠気を覚ましたい顧客
・「アクオ」
→口臭が気になる顧客
・「フィッツ」
→新感覚の噛み心地を試したい顧客
ガム市場と一口に言っても、そこでの顧客ニーズは様々です。
そこで、ロッテでは、多様な顧客ニーズを把握し、それぞれの市場セグメントに対して明確なポジションを確立することができる複数のブランドを設けています。
つまり、ニーズの異なるそれぞれの市場に合わせた製品を開発し、異なるポジショニングを取ることにより対応しています。
次の具体例として、サントリーによって2017年に市場導入された「クラフトボス」を見てみましょう。
サントリーは当初、1992年に「ボス」を市場に導入しました。
そこでのポジショニングを表すキャッチコピーは、「働く人の相棒」でした。
その後、成熟市場における缶コーヒーの販売拡大を狙ったサントリーは、缶コーヒーを積極的には飲まないIT系オフィスワーカーに着目しました。
彼らの飲用スタイルを市場調査してみると、「働きながら飲む」ことへのニーズがあることが分かりました。
そこで、オフィスで少しずつ飲むことを想定し、何回かに分けて飲み続けられるように、缶ではなくペットボトルを採用したのです。
また、本格コーヒーであることを伝えるために、「クラフト」のネーミングを「ボス」の前につけるというブランド・ネームの変更も行いました。
さらに、味や飲み心地の改良にもこだわりました。
新製品開発の過程では、豆の選定、焙煎、抽出など200超の工程を実現し、5種のコーヒー豆をブレンドするというこだわりを見せました。
その結果、コクがありながらも苦すぎず、すっきり飲み続けられる「澄みわたるコク」を実現し、若年層と女性からの支持を得られたのです。
こうした綿密なSTPの検討により開発された「クラフトボス」は、2017年度の日本マーケティング大賞に輝きました。
4.STPの検討作業は一度やって終わりのものなのか?
STPの検討作業は、製品、流通、価格、プロモーションに関する意思決定(マーケティング・ミックス4Pの設計)の前の段階で行うのが理想です。
STPは、マーケティング戦略を設計する前提としての大事な情報収集にあたるものだからです。
事前の情報収集がしっかりなされているからこそ、適切な戦略を作り出すことができます。
未来を予測した仮説を立てるには、過去や現在の入手可能な情報をしっかり収集し、分析・評価することが必要です。
ただし、市場の競争環境は、新技術が開発されたり、新しいライバルが現れたりなど、常に変化していくものです。
そのため、ターゲティングやポジショニングは、競争環境の変化に応じて柔軟に変更すべき場合もあります。
その場合には、マーケティング・ミックス4Pの設計のやり直しとSTPが同時進行してもかまいません。
むしろ、競争環境の変化に対して常にアンテナを張り、以前決定したマーケティング・ミックス4Pの実行中であっても、STPの再検討作業は続けられるべきでしょう。
したがって、リーダーの方は、事前のSTPはもちろんのこと、その後の再検討作業まで含めてしっかりと行うようにしましょう。
以上、最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。
次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第8回)」をお届け致します。
リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。
<主な参考文献>
この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。
①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。
もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。
実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。
ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)
①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)
②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)
③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)
④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)
⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)
⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)
⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)
⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)
⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)
⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』 (有斐閣、2016年)
⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)
⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)
マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。
手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。
これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。
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