リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第8回) 〜顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(前編)~

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リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第8回)
〜顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(前編)~

 

こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。

「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、
リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。

このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。

前回の記事(第7回)では、マーケティング・ミックス4Pを効果的に展開するための事前準備として、STP、すなわち、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)を検討することをご説明しました。↓
リーダー初心者のためのマーケティング入門(第7回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)

今回のテーマは「顧客ニーズをとらえるためのセグメンテーションとは?(前編)」です。

うちは中小零細企業だから、大手と戦っても勝てるはずがない」と諦めていませんか?

中小零細企業の社長さんや店長さん、あるいは、個人事業主やフリーランスの方は、大手と比較して自分たちでは勝てるわけがないと諦めがちです。

しかし、セグメンテーションによって市場を顧客ニーズごとに区分することで、勝つチャンスが見えてきます

そもそも、マーケティングとは、ターゲット層の顧客ニーズを把握し、顧客を満足させる製品やサービスを提供することで、顧客から支持され続けるための仕組み作りのことです。

ということは、顧客ニーズが多様化している現在、市場を一括りに捉えるのではなく、市場を細かく区分することで、顧客ニーズを正確に把握する必要があります。

そのために行うのが、セグメンテーションです。

そこで、今回の記事では、セグメンテーションについて具体的にご説明して参ります。

それでは行ってみましょう!

 

1.マス・マーケティング及びミクロ・マーケティングとは?

科学技術の発達により、大量生産・大量販売・大量消費が可能になりました。

そのため、かつては、消費者全体を大衆として一括りにして捉えるマーケティングである「マス・マーケティング」が有効に機能していた時代がありました。

マス・マーケティングでは、大量生産によって生産コストを下げて、効率よく流通に乗せ、大衆消費者に安く製品を売ることが重視されました。

つまり、売り手は限られた製品を大量生産し、大量流通させ、大衆に向けた広告宣伝などのプロモーションをすることで、市場全体に売り込むことができたのです。

市場全体に製品やサービスが行き渡っていない時代でしたので、顧客ニーズを細かく分類せずとも売れた時代だったのです。

例えば、コカ・コーラはかつて、192mlの瓶入りコークのみを大量生産し、世界的な流通網を駆使して、世界中の人々に大量販売することができていました。

ところが今日、顧客のニーズが多様化し、一つの市場の中でも様々な趣味・嗜好を持った顧客が存在するようになりました。

顧客ニーズが多様化してきたのです。

そのため、一つの製品だけでは市場の全てを満足させることができなくなっています。

そこで、共通した顧客ニーズごとに市場を細分化し、それぞれに合わせたマーケティング戦略をとる「ミクロ・マーケティング」がマス・マーケティングに取って代わるようになったのです。

 

2.ミクロ・マーケティングの種類とは?

ミクロ・マーケティングには、「セグメント・マーケティング」「ニッチ・マーケティング」「カスタマイズド・マーケティング」という3つの種類があります。

どれも市場を細分化して顧客ニーズを正確に捉えるためのマーケティングですが、どれだけ細かく顧客ニーズに迫るのかによって異なります。

以下、3つの種類それぞれについて具体的に見ていきましょう。

 

 2-1.セグメント・マーケティングとは?

第一は、「セグメント・マーケティング」です。

ある特定の市場を細かく分析してみると、同じようなニーズや同じような購買力、同じような生活スタイルを持つ共通の顧客層がいます。

そのため、市場の中を共通の顧客層を持つ複数のセグメント(区分)に区別して考えた方が、顧客ニーズを具体的に捉えることができます。

そこで、前回の記事でもご説明しましたように、共通の顧客ニーズを持ったセグメントごとに市場を細かく分類する「セグメンテーション」を行います

セグメンテーションによって、市場全体を一つの塊として捉えるのではなく、市場を複数のセグメントからなる集合体として捉えることで、それぞれのセグメントに向けて異なる製品やサービスを提供できるようになります。

このように、マス・マーケティングとは異なり、市場の中で異なる顧客ニーズに的確に応えられるようにするため、セグメント・マーケティングが大切になっています。

セグメント・マーケティングの好例としては、前回の記事で具体例として挙げたロッテによるガム市場への対応や、サントリーの「クラフトボス」の開発などがあります。

 

 2-2.ニッチ・マーケティングとは?

第二は、「ニッチ・マーケティング」です。

ニッチ」とは、明確な顧客ニーズを持った固定ファンがいるような市場内の小さな特定部分をいいます。

ニッチ・マーケティング」とは、ニッチ市場の顧客ニーズをターゲットとしたマーケティングです。

「ニッチ・マーケティング」は、セグメント・マーケティングよりも、顧客ニーズをより一層細分化して、売り手の強みを生かせるような特定の顧客層のニーズを的確に捉えます

そのため、ニッチ・マーケティングを行う売り手の製品やサービスは、特定顧客からの強い支持を得ることができます。

したがって、ニッチ・マーケティングに成功した売り手は、低価格競争に陥ることなく、プレミアム価格を設定することさえもできます。

特定の顧客層のニーズだけを満たす特殊技術やサービスを売り手が経営資源として持っている場合には、ニッチ・マーケティングが有効です。

市場の中でも特定の小さなセグメントではありますが、他の企業が参入して来られないようなニッチ(隙間市場)に経営資源を集中することで、大企業でなくても、そこで圧倒的なシェアを握ることが可能なのです。

したがって、大企業と比べて、資本力、人的資源、情報力、技術開発力等において劣る中小企業は、ニッチ・マーケティングにより、まずは特定の狭い市場内で勝つ戦略をとるのが現実的でしょう

大手メーカーが得ている規模の経済性が発揮できなくなるような特殊な技術や製法を駆使することができれば、中小企業でも特定の狭い市場内では強者になれるからです。

ニッチ・マーケティングの具体例としては、高級ファッション・ブランドに化粧筆を提供している白鳳堂があります。

高級化粧筆というニッチ市場で世界シェア60%を占めています。

また、独自の製法を使って、品質面で独自の世界観を作っているヨーグルトメーカーの日本ルナも、味を楽しむこだわり派の人々を自分たちのニッチとして確保しています。

同社の差別化の本質的な部分はその製法にあります。

ヨーグルトの旨味を増し、きめ細かい食感を作り出すため、通常のハードタイプのヨーグルトを大手メーカーが4~5時間程度で発酵させるのに対し、日本ルナは16時間もかけているのです。

白鳳堂や日本ルナは、優れたニッチ・マーケティングの実践者といえるでしょう。

 

 2-3.カスタマイズド・マーケティングとは?

第三は、「カスタマイズド・マーケティング」です。

カスタマイズド・マーケティング」とは、セグメントの対象を個人の単位にまで絞り込み、個人の顧客ニーズに合ったオーダーメイド型の商品やサービスを提供しようとするマーケティングです。

マーケティングの目的は、顧客ニーズを正確に把握し、それに合った商品やサービスを開発して提供することで、顧客満足を最大化することにあります。

したがって、個人の単位で顧客満足の実現を図るカスタマイズド・マーケティングは、ミクロ・マーケティングの究極の姿といえます。

確かに、従来までは、コスト・パフォーマンスの面でカスタマイズド・マーケティングを実行することは困難でした。

しかし、生産技術や情報技術が進歩したことにより、規模の経済性を活かしながら個人レベルの顧客ニーズに対応する製品やサービスの提供が実現できるようになったのです。

そのため、カスタマイズド・マーケティングを上手く実行できる売り手は、生産ロスや販売ロスを最小限に抑えることができ、また、顧客にとっても自分の個別ニーズに合った製品やサービスを入手できるので、双方にとってwin-winの関係を築くことができます。

カスタマイズド・マーケティングの成功例としては、スポーツ用品で有名なNikeが挙げられます。

Nike iDによって、スニーカーであれば、ベースやソールの色を始め、自分のイニシャルや好きな番号などを入れることができます。

これによって、自分専用のオリジナルなスニーカーを作ってもらうことができ、顧客の満足感は高まります。

 

3.セグメンテーションを行う上で大切なこととは?

顧客ニーズがある程度共通したセグメントに分けることができると、そのセグメントに対して、より効率的かつ効果的に経営資源を投入して顧客ニーズに働きかけることができます。

そのため、セグメンテーションを行う場合には、同一のセグメント内は同質的な顧客ニーズになるように、そして、異なるセグメント間では異なる顧客ニーズとなるように区分することが大切です。

したがって、綿密な市場調査によって、顧客ニーズをできるだけ正確に把握して分類しておくようにしましょう。

リーダーの皆さんは、セグメンテーションを適切に行うことによって、自分がターゲットとする顧客ニーズを正確に把握し、マーケティング戦略を効果的に実行していってください。

 

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第9回)〜顧客ニーズをとらえるためのセグメンテーションとは?(後編)」をお届け致します。

リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。

 

<主な参考文献>

この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。

①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。

もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。

実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。

ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)

 

①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)

②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)

③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)

④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)

⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)

⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)

⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)

⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)

⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)

⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』

(有斐閣、2016年)

⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

 

マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。

手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。

これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。

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