リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第9回)〜顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(後編)~

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リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第9回)
〜顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(後編)~

 

こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。

「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。

このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。

前回の記事(第8回)では、「顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(前編)」をご説明しました。↓

リーダー初心者のためのマーケティング入門(第8回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)

今回のテーマは「顧客ニーズを捉えるためのセグメンテーションとは?(後編)」です。

実際にセグメンテーション(=市場細分化)を適切に行うには、どんな基準で市場を分類すればいいの?」という疑問をお持ちの方も多いかと思います。

そこで、今回は、「セグメンテーションにおける市場細分化の切り口」について具体的にご説明して参ります。

それでは行ってみましょう!

 

1.セグメンテーションのための市場細分化の切り口とは?

セグメンテーション(=市場細分化)は、いくつかの切り口(=細分化変数)で検討することができます。

代表的な切り口として、地理的変数人口統計的変数サイコグラフィック変数行動上の変数などがあります。

 

 1-1.地理的変数とは?

地理的変数」とは、気候、人口密度、行政単位などを基準にして市場を細分化するものです。

多くの場合、地域によって顧客ニーズの違いが確認できることがあります。

例えば、関東地域と関西地域では好まれる風味が違います。

そこで、地域による顧客ニーズの違いに応えるため、納豆や味噌などの多くの食品では異なる味付けがなされることが多いです。

住宅や自動車などでも、沖縄などの暖かい地域と北海道などの寒い地域では、それぞれの地域の気候条件に合うように異なる設計・仕様がなされています。

このように、地域の特性に注目して展開されるきめ細かいマーケティングのことを「エリア・マーケティング」と呼んでいます。

 

 1-2.人口統計的変数とは?

人口統計的変数」とは、年齢・性別・所得・学歴・ライフステージ・職業などを基準にして市場を細分化するものです。

多くの消費財製品などのセグメンテーションにおいて、最も頻繁に利用されている切り口といえます。

例えば、化粧品は、まず性別によって女性用と男性用に区別されます。

さらに、女性用化粧品は、女性の年齢による身体的変化に応じて、若者向けから高齢者向けまでキメ細かく分類された製品が提供されています。

また、所得や職業という切り口でセグメンテーションする例としては、クレジットカードがあります。

ゴールドカードやプラチナカードなどの顧客の所得や職業に応じた各種の製品が提供されています。

 

 1-3.サイコグラフィック変数とは?

サイコグラフィック変数」とは、ライフスタイルやパーソナリティ(顧客の性格や価値観、個性)などを基準にして市場を細分化するものです。

顧客ニーズが多様化している現在、性別や職業が同じで、同じような年齢で、同じような所得であっても、各個人によって生活スタイルや価値観が異なることはよくあります。

例えば、旅行や外食が好きで、なるべく外に出て色々なものを見聞きしたり体験したいというアウトドア派の人がいます。

他方で、室内で過ごすことが好きで、読書やゲームをしたりして過ごすインドア派の人もいます。

こうした違いは、個人の個性や価値観、スタイルの違いによるものであるため、人口統計的変数のような客観的な基準では検討するのが難しいです。

そこで、サイコグラフィック変数を用いて、顧客の性格や価値観、個性を明らかにし、適切なセグメンテーションをすることができるようにします

つまり、サイコグラフィック変数というのは、消費者の生活様式や生き方に光を当てた変数といえます。

例えば、書店の雑誌コーナーに行きますと、若い女性をターゲットとしたファッション雑誌が何種類も目に入ります。

一口に女性といっても、年代やライフスタイルの違いに応じて好まれるファッションは異なります。

そのため、それぞれの女性ファッション雑誌は、ターゲットとする年代やライフスタイルごとにテーマを定めて読者層に訴えています。

その他の例としては、タバコ、アルコール飲料、保険などの製品やサービスにおいて、パーソナリティーの違いを考慮した製品開発がなされています。

どの具体例も、サイコグラフィック変数によってセグメンテーションするのは、より顧客ニーズに合った製品やサービスを提供していくためです。

 

 1-4.行動上の変数とは?

行動上の変数」とは、ベネフィット(=顧客が感じる便益)、使用頻度、ロイヤルティ(=製品やサービスへの顧客の忠誠度)、使用機会などを基準にして市場を細分化するものです。

例えば、スーパーやコンビニで売られている練り歯磨きを見てみましょう。

虫歯予防、口臭予防、歯周病予防など、単なる歯を磨くための研磨剤である以上に、様々なベネフィットを提供するものが並んでいます。

これは、綿密な市場調査によって顧客が求めているベネフィットを明らかにし、ベネフィットの違いに応じてセグメンテーションしたものです。

これによって、顧客が求めるベネフィットの違いごとに製品を差別化することができます。

また、顧客の使用頻度の違いに注目して、セグメンテーションする売り手もいます。

いくつかの業界では、買い替えの機会が多く、低単価を好むヘビーユーザーを狙う企業もあれば、逆に、買い替えの機会が少なく、高単価で売れるライトユーザーを狙う企業もあります。

 

 1-5.細分化変数を用いる場合の注意点とは?

なお、職業と所得、ライフステージと年齢のように、人口統計的変数のいくつかは、極めて強い結びつきをもっていて、結びついた変数同士が共通する一塊りのターゲット層がいます

したがって、人口統計的変数の中の複数の変数を組み合わせる時には、一塊りのターゲット層を見逃さないように注意しましょう。

また、宗教や人種のように、アメリカではビジネスシーンだけではなく、大統領選の行方をも左右するような重要な意味を持つ変数もありますが、日本ではほとんど意味を有していない変数もあることに注意しましょう。

社会的・経済的・文化的な背景が異なれば、重視するべき変数も異なってくるからです。

 

2.効果的なセグメンテーションの3つの条件とは?

①独自性があること

そもそも、セグメンテーションの目的は、顧客ニーズの違いごとに市場を細分化して、適切なマーケティング活動を行えるようにすることです。

そのため、細分化された各セグメントは、顧客ニーズの違いが明らかになるように区分される必要があります。

したがって、各セグメントは、マーケティングの手法にそれぞれ異なる反応を示すような独自性があるものでなければなりません

つまり、異なるセグメント同士では、必要となる製品の使用や、価格に対する感受性、利用頻度の高いメディアなども異なっていなければならないのです。

逆に、同じセグメント内ではマーケティングの手法に対する反応が類似している必要があります。

類似性が高い方が、マーケティングの効果や効率が高まるからです。

②十分な規模であること

対象とするセグメントの規模があまりに小さいと、十分な売上と利益が確保できず、採算割れになってしまう可能性があります。

ビジネスの目的は利益を確保することですから、採算割れになってしまうほどセグメントの規模を小さくするのは本末転倒です。

つまり、利益を確保できないほどニッチすぎてもいけないのです。

したがって、セグメンテーションをする場合には、そのセグメントが十分な規模である必要があります

③確実性があること

セグメンテーションはいわば、マーケティング担当者の頭の中で、異なる顧客ニーズごとに市場の中に境界線を引いたものです。

そのため、セグメンテーションされたものが、現実の顧客ニーズの違いとかけ離れたものになってはいけません

したがって、各セグメントは確実性があることを条件とします

具体的には、以下の5つを備えている必要があります。

実行可能性

測定可能性

差別化可能性

利益確保可能性

接近可能性

以上、効果的なセグメンテーションを行うために、独自性、十分な規模、確実性の3つの条件を備えるようにしましょう

 

3.セグメンテーションのメリットとデメリットとは?

①セグメンテーションのメリット

顧客ニーズの多様化が進んだ現在では、マーケティングも「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」のようには行きません。

そこで、セグメンテーションを行うことで、顧客の多様なニーズに対して焦点が定まった的確な対応ができるようになります。

その結果初めて、マーケティングの効果と効率を高めることができます。

また、各セグメントの顧客ニーズに合う製品やサービスを提供することができれば、顧客の購入意欲が高まり、市場全体の規模を拡大させることも期待できます

②セグメンテーションのデメリット

他方、セグメンテーションの細分化をやり過ぎますと、かえって企業のコスト負担が増加することになってしまいます。

細分化されたセグメントの分だけ製品やサービスの種類を増やさざるを得ず、そうなりますと、生産工程や在庫管理が複雑化してしまうからです。

経営資源は有限であるにもかかわらず、戦力が分散してしまうのです。

また、セグメントを細かく分類し過ぎた分だけ、必要となるプロモーションの数も増えてしまいます

その結果、広告制作費や媒体管理のコストも負担が重くなります

さらには、市場を細分化しすぎて製品やサービスが多様化すればするほど、1品目あたりの製品の需要は減少してしまいます。

したがって、セグメンテーションにあたっては、効果的な市場細分化の条件やメリット・デメリットを踏まえて、どの程度まで市場を細かく分類するのが適切かを慎重に検討していきましょう

 

4.効果的なセグメンテーションを行うためにリーダーが心掛けるべきこととは?

効果的なセグメンテーションを行うためには、顧客ニーズの共通性から見て、同一セグメント内では同質的、異なるセグメント間ではできるだけ異質な反応をするように市場を分類しなければなりません。

そのため、顧客ニーズや市場の動向を読み解く視点、かつ、社会全体の変化や仕組みを深く洞察することができるような視点を持つ必要があります。

優れたリーダーやマーケター(=マーケティング担当者)は、市場だけでなく社会全体の優れた観察者であり、鋭い洞察力と戦略眼を兼ね備えているものです。

したがって、優れたリーダーとしての鋭い観察力と洞察力、戦略眼を養うために、日ごろから社会について感度良くアンテナを張り巡らせ、人間心理の本質を問うような思考パターンを身に付けていきましょう

そのために、日頃からできるだけ難解な書物を多数読破して文脈力と洞察力を磨くとともに、週刊誌なども読み漁って最新の市場や社会全体のトレンドを感じ取るようにしましょう。

 

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第10回)」をお届け致します。

リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。

 

<主な参考文献>

この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。

①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。

もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。

実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。

ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)

 

①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)

②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)

③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)

④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)

⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)

⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)

⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)

⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)

⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)

⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』

(有斐閣、2016年)

⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

 

マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。

手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。

これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。

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