リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第6回) 〜マーケティングの4Pとは?~

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リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第6回)
〜マーケティングの4Pとは?~

 

こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。

「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、
リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、
コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。

このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。

さて、今回のテーマは、「マーケティングの4Pとは?」です。

本来は、マーケティング戦略を考えていくにあたって、事業の定義あるいはドメインの定義といったものを思考の出発点としなければなりません。

事業の定義等は、戦略的思考の出発点であるとともに、事業の方向性に迷ったらいつでもそこに立ち返るべき戦略論の基本だからです。

しかし、事業の定義等は議論の内容が抽象的で難しいため、マーケティング戦略入門講義の最初の方で説明するのはふさわしくないと思います。

よって、事業の定義等についての話は、この入門講義の最終章でご説明します。

マーケティングの4P」の話は、戦略レベルのものというよりは、戦術レベルのものです。

戦術レベルの話の方が入門レベルの方にとってはイメージが持ちやすく、理解しやすいと思います。

確かに、実際の考える順番としては、戦略→戦術という流れが一般的です。

しかし、入門レベルの段階では、イメージしやすい戦術→戦略の順で学んでいかれる方が良いと思われます。

そこで、今回の記事では「マーケティングの4Pとは?」をテーマに、4Pの概要をご説明して参ります。
(4Pの各内容の詳細については、次回以降の記事で詳しくご説明します。)

 

それでは行ってみましょう!

 

1.マーケティング戦略を具体化するための考え方とは?

マーケティングとは、売り手が顧客から支持され続ける仕組み作りのことです。

ただ、売り手としての企業の活動の内容は様々なので、具体的に何をどうしたら良いのかを漠然と考えていても前に進みません。

そこで、漠然と捉えて考えるのではなく、顧客に働きかける活動を細かく分けて、分析しながら考えていく方が効率的です。

この点、マーケティング研究者・ジェローム=マッカーシーは、売り手側がコントロール可能なマーケティング要素を以下の4つに整理しました。

・「製品(Product)

・「流通(Place)

・「価格(Price)

・「プロモーション(Promotion)

これらの頭文字をとって、「マーケティングの4P」と呼ばれています。

そこで今後は、売り手が顧客に働きかける活動を4つのPに分けて考えていくことにします。

つまり、マーケティング戦略の基本とは、顧客ニーズが共通するターゲット市場を見つけ出し、そこにフィットするように、4つのPを上手く組み合わせていくことなのです。

そして、4つのPの組み合わせを「マーケティング・ミックス」といいます。

マーケティング・ミックスは、ターゲット市場において目標とした成果(=顧客からの支持)を実現するために行われます。

 

2.マーケティング4Pの具体的な内容とは?

ここからは、マーケティング4Pである「製品(Product)」「流通(Place)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」の具体的な内容について、それぞれ見ていきましょう。

 

 2-1.製品(Product)の検討課題とは?

 

まず、「製品(Product)」では、売り手が顧客に提供する製品やサービスの内容をどう設計するかについて検討されます。

そもそも顧客から支持される製品やサービスを作らなければ、売れません。

したがって、顧客から支持され続けるためには、顧客ニーズにフィットした良い製品やサービスを作り出す必要があります。

「製品(Product)」についての具体的な検討課題は、以下の通りです。

 

・新製品をどのように開発したら良いのか?

・既存製品をどのように改良すべきなのか?

・売れ行きが悪くなった製品をいつ廃棄したら良いのか?

・ブランド価値をどのように構築するか ?

・保証や返品等の仕組みについてどのように設計するか ?

 

 2-2.流通(Place)の検討課題とは?

次に、「流通(Place)」では、製品をどのような流通経路を通して顧客の手元に届けたら良いのかという課題が検討されます。

せっかく顧客ニーズにフィットした良い製品やサービスを作り出しても、それを欲しがる顧客が入手しやすい形で提供されなければ売れません。

したがって、顧客が買いたい時に、買いやすい場所で製品やサービスを入手することができるような流通経路を設計しておく必要があります。

「流通(Place)」についての具体的な検討課題は、以下の通りです。

 

・販売ルートであるチャネル(流通経路)をどのように設計し管理したら良いのか?

・卸売店や小売店などのチャネル間で発生する利害対立をどのように扱ったらよいのか?

・原材料を安定的に入手できる流通経路をどのように確保したら良いのか ?

・効率的に製品を配送していくためには、どのような輸送手段(ロジスティックス)が良いのか?

 

 2-3.価格(Price)の検討課題とは?

価格(Price)」では、既存製品や新製品の価格をいくらで提供するかについての課題が検討されます。

良い製品やサービスを作り出し、顧客が入手しやすい流通経路に置いたとしても、顧客が入手したくなる価格でなければ売れません。

そのため、既存製品や新製品の価格をいくらに設定して顧客に提供するかを慎重に考えねばなりません

京セラ元社長の稲盛和夫氏は「値決めは経営である」と述べています。

経営の死命を制するのは値決めです。
値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあると言えます。
どれほどの利幅を取ったときに、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。
その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。
この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行われなければならないのです。
(出典:値決めは経営である | 稲盛和夫 OFFICIAL SITE (kyocera.co.jp)

実際、価格の設定は、売り手自身の利益構造や顧客ニーズ及び心理を深く理解しなければならないため、非常に頭を使う作業になります。

価格の設定は、利益を生み出す唯一のマーケティング変数であると主張する人さえいるほどです。

「価格(Price)」についての具体的な検討課題は、以下の通りです。

 

・製品原価や顧客ニーズ、競争環境について、どのようなバランスで価格設定をしたら良いのか ?

・売れ行きが良くない場合に、値引きや値下げ等の価格変更をどのように行えば良いのか?

 

 2-4.プロモーション(Promotion)の検討課題とは?

プロモーション(Promotion)」では、広告、人的販売、パブリシティー、そして、販売促進などの各施策をどのように打てば、顧客の認知・理解を得られるのかについての課題を検討します。

つまり、プロモーションとは、顧客に製品の購入を促すための各種の情報提供及びその他の活動のことです。

どれだけ良い製品やサービスであっても、顧客に製品やサービスの存在を知ってもらい、理解してもらわなければ売れません。

顧客にその存在を知られていない製品やサービスは、世の中に存在していないのと同じ扱いになってしまうのです。

そのため、売り手は、適切なプロモーションにより、顧客に製品やサービスを認知・理解してもらわなければなりません

そこで、顧客が普段の生活でどのような情報源に接し、どのようなプロモーション媒体を活用すれば良いのかについて検討します。

その上で、売り手が届けたいメッセージを、届けたい顧客に、タイムリーに届ける仕組み作りが必要になります。

「プロモーション(Promotion:情報提供活動)」についての具体的な検討課題は、以下の通りです。

 

・顧客がよく見る情報源は何か ?

・顧客にふさわしい情報提供の手段(情報媒体)は何か ?

・情報提供の内容としてのメッセージをどのようなものにするか?

・メッセージを届けるタイミングをいつにするか?

 

3.マーケティング・ミックスを効果的なものとするためのポイントとは?

以上、マーケティング戦略の戦術面としてのマーケティング・ミックス4Pを見てきました。

マーケティング・ミックス4Pを設計していく上で大切なのは、4P全体を顧客ニーズにフィットした統一感のあるものにすることです。

つまり、4つのPそれぞれがちぐはぐなものではなく、顧客側から見て統一的なイメージを持てるように設計しなければならないのです。

4つのPのそれぞれが全体的にちぐはぐなイメージのものであるならば、顧客は混乱し、購入してくれません。

例えば、 グッチやプラダなどの高級バッグが、スーパーの野菜売場で無造作に売られていたとしたらどうでしょうか?

逆に、カルティエなどの高級店で叩き売りの野菜が売られていたら、どうでしょうか?

それぞれの製品やサービスには、顧客が納得するような、相応しい陳列場所や演出方法があるはずです。

また、半径10キロメートル以内を商圏とする地元密着型の塗装専門店が、全国CMを流したとしたらどうでしょうか?

高級フランス料理店と歌っているのに、店内の内装が安っぽくて、しかもセルフサービスだったとしたらどうでしょうか?

このように、売り手が顧客に提供するマーケティング・ミックス4Pは、顧客側から見て納得のいく統一感のある活動でなければならないのです。

第1回目の記事で、戦略的思考の基本とは「大きく、未来を、論理的に考える」ことだと学びました。↓

リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第1回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)

戦略的思考の中でもマーケティング・ミックス4Pを考えるために大切なのは、「論理的」であることです。

論理的」とは、前の言葉と後の言葉の正しい意味のつながりのことをいいます。

マーケティングで言えば、顧客のニーズに対してちぐはぐでないことです。

つまり、4つのPが全体的に見て、そして4つのPのそれぞれにおいて、意味が正しくつながっていることなのです。

もしマーケティング・ミックス4Pが論理的に設計されていなければ、顧客は混乱してしまい、売り手の商品やサービスを買ってくれません。

そのため、マーケティング・ミックス4Pを論理的に作り上げ、全体として統一感や調和がとれたものにしていくのです。

その際、4P全体がターゲット顧客にフィットするとともに、4Pそれぞれの関係においてもフィットする必要があります。

なお、4Pは、企業側からの視点に立って整理された枠組みです。

これに対して、顧客側からの視点に立って整理し直す捉え方が新しく提示されています。

広告学者・ロバート=ラウターボーンは、顧客側からの視点に立ち、従来のマーケティング4Pを以下の4つのCに置き換え、整理し直しています。

 

・顧客ソリューション(Customer Solution)

・利便性(Convenience)

・顧客コスト(Customer Cost)

・コミュニケーション(Communication)

 

リーダーの方はぜひ、全体として統一感や調和のとれたマーケティング・ミックス4P(あるいは4C)を設計するようにしましょう。

 

以上、最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第7回)」をお届け致します。

リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。

 

 

<主な参考文献>

この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。

①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。

もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。

実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。

ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)

 

①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)

②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)

③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)

④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)

⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)

⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)

⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)

⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)

⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)

⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』

(有斐閣、2016年)

⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。

手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。

これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。

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