リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第5回) 〜マーケティング3.0を深掘りしてみよう~

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リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第5回)
〜マーケティング3.0を深掘りしてみよう~

 

こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。

「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、
リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、
コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。

このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。

さて、今回のテーマは、マーケティング3.0を深掘りしてみようです。

マーケティングの神様である経営学者のフィリップ・コトラー教授によれば、現在のマーケティングの考え方は「マーケティング5.0」にまで進化しています。

以前の記事「第2回~そもそも『マーケティング』って何?~」では、マーケティング1.0~4.0までの進化の流れをご説明しました。↓

リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第2回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)

100年ほど前のアメリカ合衆国で始まった近代マーケティングの構築以降、マーケティングは時代の変化に合わせて、少なくとも数回の進化を経験してきました。

競争戦略論、リレーションシップ論、ブランド・エクイティ論などといった、時代の変化に合わせた新しい考え方がマーケティングの中に次々と導入されたためです。

そして、その進化は時代の変化に合わせて今も続いています。

ただ、「マーケティング3.0」とそれ以前のマーケティングとでは、かなり考え方の変化が見られます

「マーケティング3.0」の本質をよく理解しておくことで、その後に進化したマーケティングの考え方もよく理解できるようになります。

そこで、今回の記事では「マーケティング3.0」について深掘りしてご説明していきたいと思います。

 

それでは行ってみましょう!

 

1.マーケティング3.0へと進化させた競争環境の変化とは?

インターネットの普及に伴うYouTubeやTwitterなどのソーシャル・メディアの浸透が、世界の人々をリアルタイムでつなぐようになりました。

従来の売り手と顧客とのコミュニケーションに、顧客同士のコミニケーション売り手と社会全体へのコミュニケーションが加わりました。

このため、リアルタイムでの情報交換が様々な方向に活発に行われています。

また、欧米などに変わって、東南アジアなどの新興市場が台頭してきており、わが国の輸出入品の競争環境が変化しています。

さらには、少子高齢化を始めとする社会問題の深刻化により、政府や企業が向き合うべき社会課題も変わってきています。

つまり、売り手が展開するマーケティングを取り囲む競争環境が、時代と共に大きく変化してきているのです。

そのため、マーケティング自体が様々な環境変化への抜本的な対応に迫られています

いつの時代であっても、戦略の前提となる条件や環境が変わってくれば、戦略そのものの考え方が変わってくるのは自然なことです。

戦略も変化させていかないと時代の変化に取り残されてしまい、生き残れないからです。

したがって、マーケティング1.0~2.0とマーケティング3.0とでは、
その根本的な考え方が大きく変わってきていることを理解する必要があります。

 

2.マーケティング1.0及び2.03.0の違いとは?

ここで、マーケティング1.0~3.0の内容を軽く復習しておきましょう。

まず「マーケティング1.0」は、
顧客を大衆(マス)として一括りに捉え、安価な製品提供を目指す製品中心の考え方です。

発想のスタート地点を売り手側の製品から考えるのが特徴です(プロダクトアウト)。

次に「マーケティング2.0」は、
市場を顧客ニーズに応じて細分化し、ターゲットと定めた顧客ニーズの満足を目指す顧客中心の考え方です。

発想のスタート地点を買い手側の顧客ニーズから考えるのが特徴です(マーケットイン)。

これらに対して、「マーケティング3.0」は、
売り手と顧客を取り巻く社会全体を発想のスタート地点に取り入れた社会中心の考え方です。

ここで、あえて「社会」という言葉が用いられているのは、人々を単なる商品やサービスを購入して消費するだけの存在として捉えないためです。

人は社会的な存在である」という言葉があります。

人は社会の他者との関わりの中で、自分の役割ややりがいを確認し、自己実現を図っていく生き物であるといえます。

人々は、購入する製品やサービスに対して、社会の中の他者との関わりにおける精神的な満足をも求めるように変化してきています。

例えば、ハーレーダビッドソンという有名なバイクを所有することは、バイカー仲間の間でステータスを感じさせてくれます。

また、同じハーレーを所有するメンバークラブに所属するという欲求も満たしてくれます。

顧客が社会の中でどういう風に存在したいか、他者からどういう風に見られたいかという精神は、社会の中における自分の存在価値を求めるものと言えます。

そのため、「マーケティング3.0」では、
社会的存在意義を求める全人格的な存在として顧客を捉える必要があるのです。

よって、マーケティング3.0では、
その戦略を考えるにあたり、人々の思考や価値観などの精神の領域にまで踏み込んで検討していきます。

 

3.マーケティング3.03つの特徴とは?

マーケティング3.0の特徴をより具体的に言えば、

・「協働マーケティング

・「文化マーケティング

・「スピリチュアル・マーケティング

といった3つのマーケティングが統一的に組み合わされたものといえます。

①「協働マーケティング」

まず「協働マーケティング」とは、
顧客や第三者を自社のマーケティング・システム内に参加させ、協働を図るための活動です。

前述のように、TwitterやYouTubeなどソーシャル・メディアの普及により、人々はお互いにSNS上で結びついています。

そのため、リアルタイムで売り手である企業の商品やサービス、そして活動ぶりを他の人々に伝えることができます。

従来の、売り手と顧客との双方向のつながりだけではなく、顧客同士や多数の第三者まで巻き込んだ横方向のつながりに拡大しているのです。

実際に、SNS上でのコミュニケーションの影響力は、従来の近所や地域での口コミよりも無視できないレベルになっています。

ということは、顧客ニーズにかなったマーケティング活動を適切に実行すれば、顧客のファン化や、第三者からのブランド・イメージの向上が期待できます。

そのため、「協働マーケティング」によって、顧客や第三者を自社のマーケティング・システム内に参加させ、協働を図るようにするのです。

他方、売り手の企業や個人にとっては、インターネットやSNSの普及が新たな製品開発手法のきっかけにもなっています。

インターネットを通じて、社内業務の一部を不特定多数の人々へ外注化するというクラウドソーシングがやりやすくなっているためです。

例えば、チラシ広告を作る場合、社内に適切なデザイナーがいない時には、従来でしたら付き合いのある業者に依頼していました。

製作費が高い割に納得いくデザインでなくても、妥協せざるを得ないことが多くありました。

ところが現在では、クラウドソーシングにより、才能あるフリーランスのデザイナーを公募することができます。

また、個人への支払いのため、法人業者に依頼するよりも比較的安くなります。

これにより、社内の人材だけでは生み出しにくい新しいアイデアやデザインが容易に得られるように変化してきています。

有名な例としては、世界的なマーケティング・カンパニーであるP&Gの取組みがあります。

P&Gは、「コネクト・アンド・ディベロップ」という手法を使い、新製品の効果的な開発を行っているのです。

これは、ネットワークによって世界中の起業家や供給業者を巻き込み、革新的な製品アイデアを吸い上げ、自社製品の開発に活かす手法です。

この手法によって生まれたヒット製品としては、
スキンケア製品の「オレイ・リジェネリスト」、ほこり取り製品の「スウィッファーダスター」などがあります。

クラウドソーシングの先進的な活用例と言えるでしょう。

 

②「文化マーケティング」

次の「文化マーケティング」とは、
グローバル化のパラドックスに対応するための活動です。

グローバル化のパラドックス」とは、
自国をグローバル化の影響から守ろうとナショナリズムが呼び起こされる逆説的な現象をいいます。

グローバル化により経済の国境が開放されたとしても、政治は開放されない場合があります。

「経済発展が進めば自然と民主化する」と諸外国から期待された国もありましたが、現実はそうはならなかったケースなどが良い例です。

また、グローバル化により経済的な結びつきが進んだとしても、かえって国家間での貧富の格差が広がる現象が起こっています。

特定の国の内部でも貧富の格差が拡大している場合もよく見受けられます。

さらに、グローバル化による普遍的な文化の普及は、それを価値観の押し付けだと感じた人々が対抗し、伝統文化保護の動きも見られます。

グローバル化により均一的な文化が世界各地に広がるのではなく、かえって各国独自の多様な文化が広がっていくのです。

以上見てきたように、何でもかんでもグローバル化すれば良いというわけではありません。

それぞれの国や社会は、社会的、経済的、政治的、文化的な背景が異なります

それらの違いに合わせたマーケティングが必要になります。

グローバル化の真の意味を理解し、グローバル時代の中で芽生えた市民の個別的な関心や欲求に応じなければならないのです。

したがって、マーケティング3.0の文化マーケティングも、パラドックスがもたらす人々の消費行動の変化を踏まえたものにするべきです。

 

③「スピリチュアル・マーケティング」

最後の「スピリチュアル・マーケティング」とは、
物質的な満足だけではなく、社会的な存在意義を感じたいという人々の精神に訴える活動です。

創造的社会では、人々は、新しいものや美しいものなどに感動するという精神的な豊かさ自体に強い興味や関心を抱くようになっています。

新しいものや美しいものなどに感動することは、自分の社会的な存在意義を感じ、表現するための手段でもあるからです。

そのため、人々は物質的なニーズを満たす製品やサービスを求めるだけではなく、自分の精神を感動させる活動やビジネスモデルを支持するように変化しています。

その流れを受けて、新技術を開発する科学分野や人々を惹きつけるデザインを創作する芸術分野など、クリエイティブな分野で働く人々の果たす役割が増大してきています。

例えば、企業のマーケティング戦略を検討する会議の場に、デザイナーやアーティストが参加することも珍しくなくなってきました。

また、スピリチュアル・マーケティングの手法として、コンテンツ・マーケティングも盛んになっています。

これは、売り手から顧客に伝えたいメッセージやイメージを、ホームページでのブログ記事や、YouTubeでの動画コンテンツ・音声、SNSの記事などの形で届ける活動です。

コンテンツ・マーケティングによって、売り手である企業は自分たちのメッセージをマスコミを通すのではなく、ターゲット層の顧客にダイレクトに届けています。

その方が、従来よりもコミュニケーション・コストが低く抑えられ、かつ、顧客を精神的に満足させることでファン化することができるからです。

よって、売り手は顧客に提示する価値の中に共感を呼ぶようなメッセージを組み込んで情報発信していかねばなりません

顧客ニーズが多様化し、情報通信技術も変化している現在、マーケティング3.0を深く理解して、顧客から支持され続けるようにしていきたいですね。

 

 

以上、最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第6回)」をお届け致します。

リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。

 

 

<主な参考文献>

 

この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。

①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。

もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。

実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。

ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)

 

①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)

②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)

③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)

④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)

⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)

⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)

⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)

⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)

⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)

⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』

(有斐閣、2016年)

⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

 

マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。

手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。

これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。

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