リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第15回)
〜顧客満足とは?~
こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。
「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。
このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。
前回の記事(第14回)では、「顧客価値とは? 」をテーマに顧客価値の具体的内容を中心にご説明しました。↓
リーダー初心者のためのマーケティング入門(第14回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)
今回のテーマは「顧客満足とは?」です。
顧客の価値観やニーズが多様化し、類似製品も溢れている市場では、どの売り手も「顧客満足」を掲げて激しい競争を繰り広げています。
今や、顧客満足を実現できない売り手は、従来よりもいっそう生き残れなくなってきています。
それでは、「顧客満足」とは具体的にはどういうことなのでしょうか?
「顧客満足」がビジネス界で声高に叫ばれて久しいですが、その意味を具体的に知っている方は意外と少ないのではないでしょうか?
そこで、今回は「顧客満足」について具体的にご説明して参ります。
それでは行ってみましょう!
1.今日的な「顧客満足」の意味とは?
現在の市場環境を見ると、顧客の価値観やニーズが多様化し、市場の中にライバルの類似製品が溢れかえっています。
自分の製品が顧客から選ばれるようになるためには、顧客から選ばれるための理由作りが必要です。
その話を「ポジショニング」についての記事で以前にご説明しました。↓
リーダー初心者のためのマーケティング入門(第11回) | 戦略マスター頼朝 リーダーのための勉強部屋 (sales-writing.com)
自分の製品が顧客から選ばれるためには、顧客に満足してもらえるような製品、価格、流通、プロモーションといったマーケティング・ミックス4Pをしっかり作り込む必要があります。
言い換えれば、マーケティング・ミックス4Pは、顧客満足という目的のために行われる活動です。
そして、現在では顧客満足の捉え方が広がってきています。
つまり、製品の販売時点での顧客満足だけではなく、販売前の交渉段階から販売後のアフター・フォローまで含めて顧客満足を広く考える必要性が高まっているのです。
それぞれの売り手の切磋琢磨によって、顧客満足のレベルがどんどん上がり、顧客からの要求水準は明らかに従来よりも高くなってきているからです。
例えば、トラブルが起こった場合に、顧客からの苦情に対して売り手が誠実かつ適切に対応しなければ、購入者は大きな不満を抱き、すぐにライバルの類似製品に乗り換えます。
顧客にはどの製品を購入するかを選ぶ自由があることを忘れてはいけません。
また、契約前であっても、製品に関するちょっとした質問や問い合わせにおいて、売り手側の対応が納得いくものでなければ、やはり顧客は自分の製品を選んでくれません。
製品に対するわずかなトラブルや、顧客からの質問や問い合わせに対するわずかな対応ミスであっても、許されない状況になってきています。
他方で、顧客満足度の高い顧客は、簡単にライバル製品へ乗り換えることがなく、値引きへの要求も少なく、好意的な口コミを発信してくれる傾向にあります。
そのため、顧客満足度の高い顧客は、普通に満足している顧客よりも約10倍の価値があると言われています。
したがって、多くの売り手にとって、顧客満足(CS:customer satisfaction)は、主要な活動目的であり、また、マーケティング戦略を考えるための中心的な概念になっています。
この点、今日の競争が激しい市場環境における顧客満足とは、不満状態から満足状態へ引き上げるということでは足りません。
それはライバルの類似製品も当たり前に満たしていることだからです。
むしろ今日の顧客満足とは、競争のレベルが上がった結果、低い満足状態からより高い満足状態へ引き上げることを意味している場合が多いです。
2.顧客満足と顧客の期待との関係性とは?
一般に、顧客満足は、購買者が感じとった製品の品質・性能・機能・精神的満足感(=製品パフォーマンス)が事前の期待をどの程度満たしているかによって決まります。
前回の記事(第14回)で、<ベネフィット(便益) −コスト(支出費用) =顧客価値>という式をご紹介しました。
この顧客価値は、「製品パフォーマンス」のことと言い換えられます。
顧客満足は、上の式から導かれる顧客価値(=製品パフォーマンス)と事前の期待との差によって決まります。
つまり、顧客満足は、<製品パフォーマンス−期待=顧客満足>という式で表されます。
この式からわかるように、製品パフォーマンスが期待に比べて低ければ、顧客満足はマイナスになり、購買者は不満を抱く結果となります。
そして、製品パフォーマンスが期待に見合うものであれば(少しでも上回っていれば)、顧客満足はプラスになり、購買者は満足する結果となります。
さらに、製品パフォーマンスが期待を大きく上回れば、顧客満足は大きなプラスになり、購買者は満足を超えた喜びを抱く結果となります。
したがって、売り手側としては、ライバルの類似製品よりも自分の製品の顧客満足を最大化できるように、マーケティング・ミックス4Pを作り込んでいく必要があります。
では、購買者の「期待」はどのように形作られるのでしょうか?
多くの場合、購買者の事前の期待は、事前に収集した情報や自身の過去の購入経験から形作られます。
事前の情報としては、家族や友人からの意見や地域社会の評判、そして、広告や販売員などから得た情報などです。
自身の購入経験とは、過去に類似製品を購入した経験から得た製品イメージのことです。
<製品パフォーマンス−期待=顧客満足>の式からわかるように、もし期待が大きすぎると、それを上回る製品パフォーマンスを提供するのが難しくなり、購買者の満足を得にくくなります。
そのため、売り手側としては、製品パフォーマンスに見合わない期待を煽りすぎないように、広告や販売員等からの顧客への情報提供の内容に慎重になるべきです。
言ってしまえば、期待に見合った製品パフォーマンスもないのに、背伸びをしてそれがあるかのように見せかけるような誇大な情報提供は、不誠実なものとして慎むべきです。
顧客からの信頼を失い、売り手側は自分で自分の首を絞めるようなものだからです。
他方、自分の製品パフォーマンスの良さをアピールして顧客に期待を持ってもらわないと、そもそも顧客から選んでもらえません。
売り手側が遠慮してアピールが足りない場合、顧客の期待は低下し、自分の製品に興味を持ってくれる顧客数が減ってしまうというジレンマがあるのです。
したがって、マーケティング・ミックス4Pの設計では、顧客の期待値の調整をバランス良く行う必要があります。
自分の製品パフォーマンスに見合った高い期待を顧客に抱かせながら、顧客の期待に誠実に応えるためのマーケティング・ミックス4Pを設計しなければなりません。
3.顧客満足の最大化について注意すべき点とは?
もっとも、製品パフォーマンスと期待との関係で顧客満足の最大化を図る際に注意すべきなのは、適正利益を確保する視点を持たねばならないことです。
つまり、顧客満足の最大化さえ実現できればそれで良いというわけではありません。
確かに、単純に顧客満足の最大化を追求することだけを考えるならば、価格を大幅に引き下げたり、あるいは、品質を高度化したりすれば良いでしょう。
しかし、そのためには無理なコスト削減努力が必要になったり、莫大な製品開発費用が必要になったりしてしまいます。
それでは売り手の側に利益が残らないどころか、赤字になってしまうこともあります。
そのため、売り手は、顧客への価値提供によって顧客満足を実現するとともに、自らも適正な利益が残るようにバランスを取るべきです。
したがって、リーダーやマーケター(=マーケティング担当者)は、顧客満足の最大化と適正利益確保の2つの点をバランスさせられるように、適切なマーケティング・ミックス4Pを設計するようにしましょう。
最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。
次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第16回)」をお届け致します。
リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。
<主な参考文献>
この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。
①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。
もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。
実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。
ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)
①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)
②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)
③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)
④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)
⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)
⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)
⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)
⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)
⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)
⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』
(有斐閣、2016年)
⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)
⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)
マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。
手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。
これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。
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