リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第1回)  〜そもそも「戦略的思考」って何?~

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リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第1回)
〜そもそも「戦略的思考」って何?~

 

こんにちは。戦略マスター頼朝と申します。

「誰もが優れたリーダーになれる!」を信念に、リーダーシップ論及びブランディング戦略の研究と、コーチング・メソッドによるリーダーシップ指導をしております。

このブログでは、リーダー初心者の方のためのお役立ち知識を解説して参ります。

さて、今回は「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第1回)」として、「戦略的思考って何?」というテーマで説明していきたいと思います。

それでは行ってみましょう!

 

1.リーダー初心者が学んでおくとよい考え方や知識とは?

 

自分から、あるいは、成り行きでリーダーになったものの(ならされたものの)、リーダーとして何から学べばいいのか分からないという方は多いかと思われます。

私の経験からしますと、良いリーダーになるために身につけておいた方がいい知識としては、4科目あります。

①マーケティング戦略や戦史を学ぶことによる<戦略的思考>

②コーチング技術やカウンセリング技術による<対人マネジメント>

③ブランディング戦略にかなった<情報発信>

④財務諸表を読みこなせる等の<計数管理>

学者レベルの専門知識までは不要ですが、各分野の専門家と会話が通じるくらいの基礎力だけでも身につけておくと、近い将来、視野が広い優れたリーダーに近づけます。

そこで、まず最初は、
「①マーケティング戦略や戦史を学ぶことによる<戦略的思考>」
について、順を追いながら、できるだけ分かりやすく説明して参ります。

「戦略的思考?マーケティング戦略? 何それ、おいしいの?」という入門レベルのことをお知りになりたい方は、ぜひお読み頂けましたら幸いです。
(何回かに分けての連載記事になります。)

 

2.そもそも「戦略的思考」とは何か?なぜ必要なのか?

 

マーケティング戦略についての解説の前に、そもそも 「戦略的思考」 とは何でしょうか ?

「戦略」という言葉は、将軍の術(The art of the general)という意味のギリシャ語であるストラテゴス(strategos)から派生した、英語のstrategyに由来するものです。
文字通り、もともとは軍事用語でした。

戦いを省略すると書くように、
「戦略」とは、無駄な戦いを避け、ここぞという所に戦力を集中し、勝利という目標を達成するためのストーリー(作戦計画)のことです。

実際、戦争の歴史を振り返ってみますと、
戦いに勝利するという目標を達成するためには(目標設定)、自軍と敵軍の兵力・武器・兵糧などの戦力や、地形、自然環境、外交資源などの現状を冷静に分析し(現状分析)、敵に勝利するためのストーリー(作戦計画)を描く必要があります(ストーリー化)。

なぜなら、歴史の教訓として、戦略を立てずに闇雲に戦ったところで、戦力を消耗し尽くして徒労に終わることを知っているからです。

確かに、様々な偶然や幸運が重なることで、戦略を立てなくてもたまたま勝利できたという事例はあります。

しかし他方で、敗北は必ず、戦略の失敗が原因にあります。
これに例外はありません。それが歴史の教訓です。

まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」(松浦静山「甲子夜話」)といえるでしょう。

そして、戦略の「目標設定→現状分析→目標達成のためのストーリー(作戦計画)作成」という考え方は、非常に広い範囲に応用が利くものです。

例えば、戦争に勝利することはもちろんのこと、
長い人生を見ても、受験に合格する、ビジネスで成功する、効率的な買い物をして経済的な生活を送る、投資に成功する、部下や後輩の指導・育成に成功する、子育てが上手くいくようにする、意中の恋愛相手と結婚するなどなど、
私達は、目標達成のためのストーリー(作戦計画)作りを日頃から無意識に行っていることが多いと思います。

つまり、何か達成したい目標がある場合には、
個人であれ、企業であれ、団体であれ、様々な場合に「戦略」的な考え方をしているのです。

具体例として、山登りをする場合を考えてみましょう。

山登りの目標(未来のあるべき姿)は、
頂上にたどり着き、そして無事に帰ってくることです(目標の設定)。

その目標を達成するためには何が必要でしょうか ?

まずは、その山の頂上の高さや、ルート、自然環境、季節などを、地図やガイドブック、Webサイト等で調べて、目標を正確に把握しますね(目標の現状分析)。

次に、その山を登るために必要な知識や、技術、体力、装備が自分に備わっているかどうかを考えます(自分の経営資源の現状分析)。

最後に、目標と現状分析の結果から生まれたギャップを埋めるために、ストーリー(作戦計画)作りをします。
体力作りトレーニングをすることや、必要な装備を購入すること、本や経験者から学ぶなどして知識や技術を身に付けることなどなど、必要な行動計画をスケジュールとともにストーリー化していきます。
もちろん、ストーリーは、状況の変化に応じて、随時、修正及び更新されていきます。

近所の歩き慣れた丘のような低い山であればともかく、ある程度の高さ以上の山に登るのであれば、登山計画をしっかり練るという戦略的思考のプロセスがなければ、山で遭難すること間違いなしだからです。

以上のような考え方の流れが「戦略的思考」というものです。

2つ目の具体例として、学術論文のような長い文章を書く場合を考えてみましょう。
1000文字以上の長い文章を書く場合、何の戦略も立てずにいきなり書き始めたらほぼ必ずつまづきます。
最後まで書けたとしても、読者から見れば一体何を言いたいのか分からない支離滅裂な文章になっていることが非常に多いです。
いわゆる遭難論文になってしまっています。

遭難論文にならないためには、
やはり文章を書く前に、目標設定→現状分析→目標達成のためのストーリー(作戦計画)作成という戦略を立てた方が良いですね。
具体的には、以下の流れで文章の執筆戦略を立ててから始めるとよいでしょう。

①テーマを決め、テーマに対する仮説を立てる(目標設定)。

②仮説を立証するためには何が足りないかを考える(現状分析)。

③仮説を立証するための取材計画・文章の構成計画・推敲計画を、時系列順にストーリー化する(ストーリー化(作戦計画))。

以上見てきましたように、
戦略的思考」とは、目標設定→現状分析→目標達成のためのストーリー(作戦計画)作成という戦略を立てるための考え方のことを言います。
そして、本来の戦争に勝つためだけではなく、私達の人生において何か達成したい目標がある時に必要な考え方になります。

一橋大学大学院商学研究科教授の沼上幹氏は、
その著『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)の中で、「戦略」について以下のように定義されています(同著p.3)。

自分が将来達成したいと思っている『あるべき姿』を描き、その『あるべき姿』を達成するために自分の持っている経営資源(能力)と自分が適応するべき経営環境(まわりの状況)とを関係づけた地図と計画(シナリオ)のようなものだ・・・(中略)・・・
経営資源というのは一般にヒト・モノ・カネ・情報であり、
経営環境とは顧客や競争相手、不景気・好景気などのマクロな経済状態などをいう」。

また、「戦略的」に思考をするために必要なポイントとして、3つのスタンスを挙げられています(同著p.4~6)。

①大きく考えること。
自分の目の前の仕事ばかり考えるのではなく、様々な他者との関係の中で自分の役割をしっかり位置づけておくこと。

②未来を考えようとすること。
どこまでが本当に予見できて、どこからは本当に予見できないことかをはっきりさせておくこと。

③論理的に考えること。
論理的に考える場合にカギとなるのは『フィット』という言葉である。
何かと何かが『フィット』しているか『フィット』していないか、という考え方が重要だ。

大きく、未来を、論理的に考えること。これが戦略家(ストラテジスト)の基本である。

以上のような戦略的思考を身につけておくことは、これから先、マーケティング戦略やブランディング戦略を本質的に理解するために大切です。

戦略的思考を身につけないと、
マーケティング用語やブランディング用語といった横文字の専門用語をただ覚えるだけで終わってしまい、それらの本質的な考え方を理解しないままの浅知恵で終わってしまう可能性が大きいからです。

そうなりますと、日進月歩で進化していく最新のマーケティング戦略やブランディング戦略の世界で溺れてしまい、応用が効きません。

いつの時代も変わらない本質的な部分をしっかり理解するためには、まずは「戦略的思考」の大切さを理解しておく必要があるのです。

 

3.戦略的思考についての『孫子』兵法の大切な教えとは?

 

最後に、「戦略的思考」の大切さについて、
約2500年前に書かれた兵法書・戦略書のベストセラーである『孫子』は、計篇の冒頭で以下のように言っています。

「孫子はいう。戦争とは国家の大事である。
〔国民の〕死活が決まるところで、〔国家の〕存亡のわかれ道であるから、よくよく熟慮せねばならぬ。
それゆえ、五つの事がらではかり考え、〔七つの〕目算で比べあわせて、その時の実情を求めるのである。
〔五つの事というのは、〕第一は道、第二は天、第三は地、第四は将、第五は法である。
〔第一の〕道とは、人民たちを上の人と同心にならせる〔政治のあり方〕のことである。そこで人民たちは死生をともにして疑わないのである。
〔第二の〕天とは、陰陽や気温や時節〔などの自然界のめぐり〕のことである。
〔第三の〕地とは、距離や険しさや広さや高低〔などの土地の情況〕のことである。
〔第四の〕将とは、才智や誠信や仁慈や勇敢や威厳〔といった将軍の人材〕のことである。
〔第五の〕法とは、軍隊編成の法規や官職の治め方や主軍の用度〔などの軍制〕のことである。
およそこれら五つの事は、将軍たる者はだれでも知っているが、それを深く理解している者は勝ち、深く理解していない者は勝てない。
それゆえ、〔深い理解を得た者は、七つの〕目算で比べあわせてその時の実情を求めるのである。
すなわち、君主は〔敵と身方とで〕いずれが人心を得ているか、
将軍は〔敵と身方とで〕いずれが有能であるか、
自然界のめぐりと土地の情況とはいずれに有利であるか、
法令はどちらが厳守されているか、
軍隊はどちらが強いか、
士卒はどちらがよく訓練されているか、
賞罰はどちらが公明に行われているかということで、
わたしは、これらのことによって、〔戦わずしてすでに〕勝敗を知るのである。」
(金谷治訳注『岩波文庫 新訂 孫子』(岩波書店、2001年)p.28~29)

孫子は、戦争とは国民や国家の存亡の分かれ道であるほどの重大事であるから、戦う前から様々な観点を照らし合わせて、勝てるかどうかをよくよく熟慮しなければならないと述べています。
すなわち、勝つための戦略が描けないのに闇雲に戦ってはいけないと説いているのです。

孫子はこの後の全篇を通して、
現状をしっかり分析し、まずは負けない態勢を整え、勝てる相手に対して、勝つべきタイミングを見出して戦うようにと説いていきます。

そのため、『孫子』は、競争に勝つための書、ひいてはビジネスや人生の中での目標を達成するための戦略的な考え方を教えてくれる書として、長いこと読み継がれてきました。

古くは、三国志の英雄で『孫子』の注釈者でもある曹操孟徳、日本の戦国武将では武田信玄徳川家康、現代のビジネス界ではソフトバンク創業者・孫正義社長Microsoft創業者・ビルゲイツオラクル創業者・ラリー=エリクソン、スポーツ界ではサッカーの名監督ルイス=フェリペ=スコラーリ、軍人では湾岸戦争を指揮し勝利したシュワルツコフ将軍
などといった錚々たる戦略家たちの愛読書として知られています。

目標を達成して明るい未来を築くために、
私達も先人を見習って「戦略的思考」を心がけていきたいものですね。

以上、最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

次回の記事では、「リーダー初心者のためのマーケティング戦略入門(第2回)」をお届け致します。
リーダー初心者で日々のリーダーシップにお悩みの方は、ぜひ楽しみにしていて下さい。

 

<主な参考文献>

 

この「マーケティング戦略入門」講義ブログを書くにあたって、参考にさせて頂いたり、引用させて頂いた主な参考文献を以下の通りご紹介致します。
①から⑫へ進むほど、少しずつ説明のレベルや知識の網羅性が上がっていきます。
もっとも、①~⑧までは、どの書籍も入門レベルのものですので、あまりご心配には及びません。
実際に手に取ってみて、ご自身に合うものから読み進められると良いと思います。
ご興味をお持ちになられた方はぜひお近くの書店でお買い求めください。
(個人的にリアル書店の皆様を応援しております。)

 

①佐藤義典『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』(青春出版社、2010年)

②佐藤義典『新人OL、社長になって会社を立て直す』(青春出版社、2011年)

③中野明『14歳からのマーケティング』(SOGOHOREI、2017年)

④市川晃久『マーケティングで面白いほど売り上げが伸びる本』(あさ出版、2016年)

⑤青井倫一監修・グローバルタスクフォース㈱編著『新版 通勤大学MBA2 マーケティング』(SOGOHOREI、2013年)

⑥平野敦士カール監修『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社、2018年)

⑦弘兼憲史・前田信弘『知識ゼロからのマーケティング入門』(幻冬舎、2009年)

⑧恩蔵直人『日経文庫 マーケティング<第2版>』(日経文庫、2019年)

⑨沼上幹『有斐閣アルマ わかりやすいマーケティング戦略〔新版〕』(有斐閣、2008年)

⑩和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦『有斐閣アルママーケティング戦略〔第5版〕』(有斐閣、2016年)

⑪河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 上巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑫河野安彦『内閣府認定マーケティング検定2級試験公式問題集&解説 下巻2020年度版』(公益社団法人日本マーケティング協会、2020年)

⑬金谷治訳注『岩波文庫 新訂 孫子』(岩波書店、2001年)

 

マーケティングを全く学んだことがない方は、①・ ②と③から読み始めると良いと思います。
手っ取り早く学びたい方は、① ・②と⑥を読めばマーケティングの全体像をつかめます。
これからマーケティングを本格的に学んでいきたい方は、①・ ②と⑥を読んだ後、
⑧と⑨を読んで基礎固めを行い、その後に⑩~⑫へと読み進んでいかれると良いでしょう。

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